体育の時間


「で、どうだった?」
 いきなりの理美(りみ)の質問に、可南(かな)はびっくりしてふり向いた。
 3時間目  はっきりいって、おしゃべりの時間  男子がやっているバスケを、カベによりかかってぼーっと見ていた可南の横に理美が体育すわりした。その後の第一声が「で、どーだった?」である。フツーなら何が言いたいのかわかるわけもない。
「どーだった?≠チて何がよ?」
 ちょっとだけ不審がっているよーな言い方。しかし、声がうわずってる…。
「ふ〜ん…」
 いたずらっぽい目で可南の顔をのぞきこむ理美。可南はモロにあせっている。
「ちーちゃんが見たんだよ…」
 ちなみにちーちゃん≠ニは2人の友達の千夏(ちか)のことである。
「(ギクッ…)み、みたって何をよ?」
 完全にあせってる…それをみて、おもしろがって話を続ける理美。
「きのー地下街を麻生(あそう)先輩と歩いてたって?ん?」
  ギクッ…い、いつ見てたんだろ…
 可南の顔が、それこそトマトのよーに真っ赤になった。
「だ、だからアレは、クラブの備品買うのに…ホラッ、あたし会計だし、先輩はぶちょーだし…」
「ほほぉ〜っ」
 そこに、いきなり現れる千夏。そしてこれまた可南のとなりにあぐらをかいてすわりこむ。
「クラブの備品だけをかうのにわざわざポールタウンから狸小路まで2人で歩くイミがあるの?セントラルいけばすむことでしょ?」
  あ、あのな〜千夏。あんたどこまで後つけてきたのよぉ〜もぉ!
「その後、え〜が館に入る必要って、あっるのっかなぁ〜?」
  げぇ〜。そこまで見てる…゛うっ。このへんで反撃しないとヤバイッ!
「……(じーっと千夏を見る)で、あんたはな〜んでそこにいたのかな〜?」
「……うっ……」
 言葉につまっちゃう千夏。しかし可南は容赦なく続ける。
「もしかしてぇ〜三枝(さえぐさ)くんとでぇとしてたのかなぁ〜?」
「そっそっそんなコトあるわけないじゃない!あたしはちょっと用事が…そうそうカナリヤに用事があって…」
  ふっふっふ…あせってるあせってる…ついでだから全部ききだしちゃえ!
 ねぇ、可南ちゃん。誰か忘れてません?
「もーっ!ちーちゃんと三枝くんがつきあってんのはわかってんだから!それからどーしたのよ?可南?」
  う…コイツを忘れてた…まずいなぁ〜
「そうそう!あたしのことはどーでも…ちょっと理美!あたしが三枝くんとつきあってるってどぉして知ってんのよぉ!あっ…しまった…
 大ボケかました千夏に、そりゃもう好きな食べ物でも見つけたかのよーにニコニコしながら、つっこむ理美。
「わーい!やっぱつきあってたんだ〜!ねぇねぇどこまでいったの?」
「え…と…ってどーゆーことよ?」
 あ、千夏ちゃん、真っ赤になってる…耳まで…
「そーゆーことよ」
 ひとさし指を立てて、あたりまえのよーにいってのける理美。
  やった!話題がそれた!らっきぃ!
 そーやってニコニコしてるとまたホコ先が向くよ…可南ちゃん…ほら…
「あんたのもじぃ〜っくりきかせてもらうからね!可南。」
 ほら、向いた…理美ちゃんの恐怖のつっこみ…さぁ、もういいのがれできねぇーぞ?
「え、え、え…」
  ひ〜ん。バレたくなかったのにぃ!
         ゴメン!麻生センパイ!!

 頭のなかで、おがみ謝り…そんなことおこってないって。たぶん…
 まぁ、こうやって他愛もない話がつづくんですが、そろそろやめないとアレがくるんですけど…ほら、気づいた…あ、歩いてきた…ほらあと少しですぐそばに来る…
ぱこん!(×3)
「こら、おまえら。何おしゃべりしてるんだ?まだ授業中だぞ?」
「ごめんなさい…(×1)」
「う〜っ…(×2)」
 …あれ?一つ足りない…あ、理美ちゃんが赤くなってうつむいてる…あー、そーゆーことだったんだ。こりゃ昼休みのエジキは理美ちゃんだね。ほぉら、2人の顔に悪魔の微笑みが浮かんでる…まぁ、ケンカにならない程度で楽しくやってくださいな。恋愛を暗〜く描くのはトレンディードラマだけにまかせて…ね?

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